PILLAR — 考え方

「名もなき作業」とは何か
——中小サービス業の時間を奪う正体と、その消し方

名もなき作業とは、予約の転記・集計・リマインド送信・日報づけなど、正式な業務名がないのに毎日発生し、時間を奪い続ける事務作業の総称です。求人票には書かれず、マニュアルにも載らず、誰も「仕事」と呼ばない。それなのに、現場実測ではスタッフ1人あたり月25〜30時間を飲み込んでいます。

なぜ「名もなき」なのか

「接客」「施術」「ガイド」には名前があります。シフト表にも書けるし、上手い下手も語れる。しかし「LINEで来た予約をホワイトボードに書き写す」に名前はありません。名前がないから、計測されない。計測されないから、改善の対象にならない。名前のない仕事は、経営の視界に入らない——これが問題の核心です。

私は1992年からダイビングの現場に立ってきました。都市型スクールで学び、2009年からは沖縄で自分の店を経営しています。34年間、どの店にも、どの時代にも、この作業はありました。道具がノートからエクセルに、エクセルからスプレッドシートに変わっても、「書き写す」という行為そのものは消えなかったのです。

実測データ: 1件の予約は7回転記される

あるとき、自分の店で1件の予約が何回書き写されるかを数えてみました。結果は7回です。

①LINEで受けてメモに写す → ②メモから予約表へ → ③予約表から段取り表へ → ④段取り表から装備リストへ → ⑤当日の日報へ → ⑥月次の集計へ → ⑦会計資料へ。

1回の転記は2分ほどの小さな作業です。しかし週30件の予約なら、転記だけで月に約30時間。ここにリマインド送信や月末の集計を足すと、スタッフ1人分の給料の1〜2割が「書き写すこと」に支払われている計算になります(詳しくは独自調査の記事で解説しています)。

見えないコストを金額にする

月25〜30時間を時給1,200円で換算すると、毎月3〜3.6万円、年間36〜43万円。スタッフが3人なら年間100万円を超えます。しかし本当のコストは金額ではありません。転記ミスで叱られるスタッフの表情、お客様の名前を覚える余裕のなさ、そして閉店後にひとり残る経営者の夜です(この話は別の記事に書きました)。

「スタッフが転記ミスで叱られる。でも悪いのはスタッフじゃない。
『何度も書かせる仕組み』のほうだ。」

なぜ誰も手をつけないのか

理由は3つあります。第一に、1つ1つが小さすぎて「そのうち何とかしよう」で先送りされる。第二に、汎用のITツールは現場のやり方に合わず、かえって作業が増える経験をした店が多い。第三に、繁忙期の現場には仕組みを変える余力がない。つまり、怠慢ではなく構造の問題です。だからこそ「人が頑張る」のではなく「仕組みを変える」以外に出口がありません。

消し方は3つある

① 転記の起点を1つにする。予約の受け口が何であれ、最初に書かれた情報がそのまま最後まで流れる構造にします。LINEで受けた予約文が自動で予約表になれば、②以降の転記は発生しません。

② 定型連絡を自動にする。前日リマインド・持ち物案内・体調確認は、内容がほぼ決まっています。人がやる必要のない代表格です。

③ 集計を「ついで」にする。日々の予約・実施記録がそのまま数字になる構造なら、月末の集計は「作業」ではなく「確認」になります。

この3つを、店のやり方を変えずに実装したのがNiraiDeskです。ただ、どのツールを使うにせよ、まず自分の店の損失を数字で見ることをおすすめします。数字になった瞬間、「そのうち」が「今月」に変わるからです。

あなたの店の「名もなき作業」は月何時間ですか?

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